中国の不動産とは
中国の不動産業界危機的状況が迫り始めました。
中国当局の締め付け強化策で、資金繰りに四苦八苦している開発業者が続出しているのです。
まさに経営危機に瀕した業界大手の中国恒大集団がリーマンショックのような経済危機の火種となる可能性が垣間見えるようです。
重大にも関わらず看過されてきたリスクを意味する灰色のサイと称されて金融市場で警戒心が横溢しています。
恒大の負債は6月末時点で約1兆9700億元(約33兆円)で、中国の国内総生産(GDP)の約2%にあたります。
その多くが買掛金や前払い金であるが、破綻すると内外に影響が拡散していくのは目に見えています。
資金繰りに呻吟する業者の中には、保有物件や資産を投げ売りする現象も噴出しているとのことです。
業界全体が苦境にあえぐ中、金融機関の貸し剥がしの動きが拡大することも危惧されます。
まさに、中国の不動産市場はこれから冬の時代を突入するようです。
中国の不動産の歴史的考察
1996年に広東省広州市で恒大は創業しました。
創業当初は従業員が10人にも満たない小さな会社でした。
低価格販売の小型マンションで基礎固めをして、折りからの不動産ブームで急成長しました。
2020年12月期の売上高は5072億元(約8兆6000億円)を達成して、物件販売は中国で2位の成績でした。
創業者の許家印氏は2017年の中国富豪番付で首位になったこともあるのです。
しかしながら、不幸なことに2020年夏に中国人民銀行は3つのレッドラインを設定したのです。
それは、①総資産に対する負債の比率が70%以下②自己資本に対する負債比率が100%以下③短期負債を上回る現金を保有していることです。
このような規制のために、恒大は複数の基準に抵触し、代金支払いが滞ってしまったのです。
恒大の負債総額は、約33兆円にも達して、中国GDPの約2%で、処理が失敗したら中国の金融システムをも破壊しかねないほどです。
習近平国家主席は、共同富裕のスローガンを掲げたばかりで、目指すべき格差是正があるので、この恒大の救済という方向には行きかねるという状況があります。
金融危機を回避するために恒大に手を差し伸べれば、不動産投資で儲かり富裕層になった人々を保護するのかと人民に思われかねないのです。
習近平指導部の共同富裕という看板は、富裕層からの所得再分配を促進して、貧困層を引っ張り上げ中間層を拡大するという構想です。
それで、中国政府は恒大の全面的な救済は回避しながら、金融システムの破綻を招来しないような隘路を探りつつあるようです。
中国不動産市場で中国人民銀行の基準を全て守っているのは4割に満たず。「共同富裕」と「金融リスクの解消」の下、第2、第3の「中国恒大集団」が現れ、経済の重荷になる恐れがあります。https://t.co/z6fUmCQkQF
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) September 23, 2021
中国の不動産と世界経済
中国恒大集団の経営危機は世界同時株安の契機となりました。
これは2008年のリーマン・ショックのような事態になってしまうのでしょうか。
中国恒大集団は強気の投資で業界第2位に急成長しました。
しかしながら、不動産の高騰を危惧した中国当局が規制をかけたら資金不足という事態を招来したのです。
中国政府がこの不動産バブルを軟着陸させられなければ、その影響は計り知れないでしょう。
中国経済の失速は世界経済に波乱を生じてしまいます。
資産バブル崩壊への警戒感から、市場には中国版リーマン・ショックを懸念する声もあり、中国政府の対応に注目が集まっているのです。
中国の不動産と対米関係
アメリカのテキサス州ばかりでなく、世界中の有利な不動産市場には、否応なくチャイナマネーが集積します。
チャイナマネーの投資の主要な指針は、実際はとても堅実です。
物件ごとに掘り出し物を探してやるような投機的精神ではなく、エリアごとに需要のある場所で、一般的で妥当な物件を購入するのです。
不動産バブルが崩壊した後でリーマンショック発生して、苦難を抱えたアメリカの前例は勉強になるのではないでしょうか。
アメリカ以上に苦しんで、未だに尾を引いているのが日本です。
明らかなように、日本はバブル崩壊の後に金融危機が発生しました。
日本ではよくあるケースですが、金融危機に対する対処の仕方がとても遅れたので、金融危機を契機として日本経済全体がとても厳しい状況を招来したのです。
山一證券、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、その他もろもろの中小・中堅の金融機関がことごとく破綻したのです。
また巨額の融資や借金をして経営破綻あるいは経営危機に呻吟したダイエー、そごう、ゼネコン等が存在したのです。
日本は明確に不動産バブルが崩壊したことで金融危機が惹起して大問題が発生しました。
そして20年近くも経済が低迷したのです。
一方、リーマンショックを受けたアメリカは日本の経験を参考にしたのか、政府がこれに対して勇猛果敢な対処の仕方を取ったのです。
金融危機が発生しそうになると、政府は巨額の資金を金融市場に投与したのです。
これは国民の貴重なお金を投与したのは間違いだという議論にもなりましたが、結果的に見てアメリカでは、リーマンショックの後に深刻な金融危機が長引くこともなく、経済に大打撃を与えることにもならなかったのです。
以上が日本のバブル崩壊とアメリカのバブル崩壊の相違点だと思うのです。
中国の不動産が日本にもたらす影響
中国人で日本に帰化した評論家の石平氏は中国の超富裕層は、国内の不動産バブルのリスクを憂慮して海外に注目しているといいます。
欧米とは外交的に対立していて、風圧が高いため、他の先進国、特に日本に注目していると分析しています。
さらにコロナ禍で中国の超富裕層は金の使い道を模索している中で、コロナが収束した後には日本への投資を念頭におき、激増するのではないかと予測しているようです。
新型コロナウイルスのパンデミック以降、中国人観光客が日本に殺到する様相は消失してしまいました。
しかしながら、中国人投資家たちは日本のマンションを中心として、不動産投資を見据えており、場合によっては爆買いが再燃するのではないでしょうか。
中国人の不動産投資家にとって、中国本土とは相違して、個人が所有権をゲットできる日本はとても魅力的で、政府による経済制裁のリスクもほぼ無いので安全安心と捉えられています。
アフターコロナにおいて、日本国内では飲食ビル、自社ビルの叩き売りも予測されるので、不動産価格が手頃なら、中国人投資家たちは魅了されること間違い無しです。
まとめ
中国にとって、不動産業は中国経済の中心的役割のひとつであり、コロナ禍後の経済復興に対して、とても大切な役割を果たすと思われます。
しかしながら、不動産業界を代表する恒大のような大会社が経営破綻すると、様々な業界へ与える影響は大なるものがあります。
中国当局の新しい規制によって、未完成の不動産物件の販売不可能のため、恒大がこれまで資金繰りに行使していた先行予約販売のやり方にも依存できなくなりました。
恒大のような大不動産会社の経営破綻を中国政府が座視することはできないという見方もあります。
それは、中国の現国家体制の安定が毀損されかねないからだと思います。
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