はじめに
古市憲寿氏の
『平成くん、さようなら』は、
芥川賞にノミネートされ、
受賞決定前に、マスコミに、
大騒ぎされて、結局落選という
憂き目にあいましたね。
小説のタイトルが、時代に
マッチングしていたので、
受賞してもおかしくないと
思ったのですが!
落し穴にはまったのでしょうか。
時代の寵児としての古市憲寿氏
古市憲寿氏は、1985年東京都生まれの
社会学者です。
代表的な作品は、
『絶望の国の幸福な若者たち』です。
古市憲寿氏は、社会学者ですから、
論文や評論は、書くが、
小説は未知の分野だったようです。
小説は、論文と違い、ひとつの結論を
必ずしも出す必要がないです。
色々な考え方を併存出来る所に、
惹かれたそうです。
古市憲寿氏のおばあさんが亡くなった
事が、小説を書く契機にもなったようです。
それで、見たこと、感じたことを書き連ねたい
衝動に駆られたのでしょう。
古市憲寿氏はバラエティー番組などにも、
頻繁に顔出ししている
マスコミ界の寵児と言っても
過言ではないと思います。
三島由紀夫との対比
私が、時代の寵児として脚光を浴びていた
小説家と言えば、
即、脳裡に浮かんでくるのは、
あの三島由紀夫です。
とにかく、三島由紀夫は、
凄かったです。
古市憲寿氏とは、
比較にならないくらい
スケールが大きい存在でした。
三島由紀夫は、舞台演出まで
やるほどでした。
自身も舞台や映画に出演し、
それこそ一世風靡していました。
あの衝撃の三島事件で、自身の
生涯を終えたのですが、
今でも、多くの人々の脳裡に、存在が
焼き付いているのではないでしょうか。
三島由紀夫の最後の作品は、
『豊饒の海』-天人五衰-ですが、
ラストが、かなり印象的です。
「生きる事と死ぬ事は一体であり無であり、
生すらも無である」という
なんとも無常感を感じる
世界が広がってくるのです。
『平成くん、さようなら』の哲学
古市憲寿氏が、三島由紀夫に影響を
受けたのかどうかは、
不明ですが、
時代の寵児として活躍していた
平成くんが、「この時代の終焉が
自分という存在の終わりである」と自覚し、
改元とともに安楽死を願望するのです。
それまで一緒に暮らしていた愛ちゃんに、
告白するのは、圧巻です。
古市憲寿氏は、
安楽死の問題と、「平成」を越える
哲学の提示をしたかったそうです。
平成と「その先」の物語ということです。
最後に
三島由紀夫と、比較するのもなんですが、
奇しくも、
三島由紀夫も寸前で、
ノーベル文学賞を
つかみ損ねています。
三島由紀夫は、
そこを分岐点として、
自身の人生のシナリオを
書き直したのではないかとの
説もあるようです。
今後、古市憲寿氏がどのように
人生行路を突き進むのか、
しばらくは、目が離せないです。