日本語教育に携わる際に、読んでおいたら得すると思われる
お勧め本を3冊紹介したいと思います。
鈴木孝夫『日本語教のすすめ』新潮新書、
黒川伊保子『日本語はなぜ美しいのか』集英社新書、
津田幸男『日本語防衛論』小学館
日本語教のすすめ
まず『日本語教のすすめ』であるが、なんとも奇妙なタイトルだと
思う方も多いと考えられます。
著者はなぜこのようなタイトルにしたのでしょうか。
日本語教の信者を自称しているが、信者はほとんどいないということです。
しかしながら、日本が大国になった以上、日本語を広める責任があるという主張です。
特に先進諸国で、日本語を読める人や読書人口を
増やさなければならないというのです。
そうすれば、日本に対する誤解や摩擦が著しく軽減するという考えです。
現在、日本語学習者が増えているといっても、わずか数百万人程度です。
英語・フランス語・ドイツ語に比べてはるかに少ないのです。
これでは、日本人はいつまでたっても、「口の痺れた巨人」とか
「声を出さない巨象」、「自動金銭支払機」などと揶揄されるばかりです。
そうならないように、今後は大量の日本語文献を各国語に翻訳して国外に
出し、新しい知的輸出産業にまで持っていく必要があるとの主張です。
日本語はなぜ美しいのか
著者は、コンピューターメーカーでAI開発に携わり、脳とことばを研究している
いわゆる理系の方です。
それなりに論理的に論じられている点で、興味を持ちました。
彼女によると、日本人の識字率が高いのは、音韻と一致している
カナ文字で、幼児期から気軽に文字に親しめるからだと主張しています。
その後、発達段階に合わせて徐々に漢字を増やしていくので、
殆ど落ちこぼれることがないそうです。
成程と、つい納得してしまいます。
注意すべきは、12歳以前には母語中心でいかないと大変なことになるそうです。
それは、胎児期から12歳までに、母語の獲得と同時に、感性の根幹を
作り上げているからだそうです。
最近の空前の英会話ブームで、小学生から英語教育をという
風潮に警鐘をならしているかのようです。
日本語防衛論
なんとも勇ましいタイトルですが、著者は長年、
英語が国際語ゆえにコミュニケーションの不平等を引き起こしているという
議論を展開されてきたようです。
孤高の闘いを挑んでこられた方なんだと感じ入る点があります。
著者の考え方で、特に「日本語教育」に若い世代が魅力を感じられるような
哲学を付加しなければならないとか、「日本語を教えること」に
社会的権威を持つ任務というイメージ作りが重要だというところには
共感しました。
また、「日本語を世界に広げ国際語にするのが、真の国際化である」という
主張もなるほどと素直にうなずけました。
以上の3冊の本は、一気に読めるので、是非必読書にしてほしいと思います。